ユーラシア経済ニュース

日本であまり報道されない、ユーラシア大陸の経済ニュース記事を翻訳して紹介しています。

破滅が近づく世界経済

 プーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部の分離・独立派地域のドンバス、ドネツク民共和国とルガンスク人民共和国を国家承認した。この決定が発表される前後にはドンバスで大変緊張が高まっており、たとえば2台のウクライナ軍の装甲車両がロシア領に侵入しようとしたため破壊され「侵入者」5名が死亡したり、ウクライナ側の砲撃によって死傷者が出たりしていた。こうした中で、両人民共和国を国家承認する法案がロシアの下院を通過し、ドネツク民共和国のデニス・プシーリンとルガンスク人民共和国のレオニード・パセクニクがともにプーチン大統領に署名を要請した。最終的にプーチンの裁量一つに委ねられる形となり、2月21日中に国家承認する旨が発表された。(Russia reports 2 armored Ukrainian vehicles attempting infiltration destroyed)(Putin Recognizes Independence of Pro-Russia Separatists in Ukraine

 

 国家承認後、プーチンはロシア軍にドネツクとルガンスクの「平和を維持」するように命じた。欧州連合NATOは当然これを非難し、ロシアに対する制裁を発表した。原油天然ガスは、ロシアがウクライナに軍隊を派遣する決定を受けて8%急騰した。原油価格は100ドルを超えそうな勢いになっているが、西側にとって大変な事態でもロシアにとっては利益になる。資源高もあってロシアを悪者にする報道が過熱しているが、そうした報道とは裏腹に、ドネツク民共和国とルガンスク人民共和国ではプーチンが国家承認を発表したあとに街で花火を打ち上げるなどお祭りムードになっている。ブルームバーグは「ロシア軍がウクライナ東部に軍隊を派遣しているが、それはヨーロッパにガスを送るパイプラインとは離れているから大丈夫だ」というような記事もこっそり出しており、「危機は煽るけどガスは来るから心配するな」という、よくわからない報道になっている。(WATCH Donetsk and Lugansk celebrate)(Russian Forces Will Be Far Away From Key Oil Pipeline

 

 ウクライナのゼレンスキー大統領はウクライナ・ロシア・フランス・ドイツによる首脳会談を要求したり、「ウクライナはロシアとの関係を断ち切る可能性がある」などと強気の発言をしているが、あんまり誰も気にしていない感じがする。ウクライナ問題はロシア・ウクライナ間の問題や、ロシア・NATO間の問題ですらなく、ドイツとアメリカの問題だとアルジャジーラは指摘している。ノルドストリーム2はウクライナなどの陸地を経由せずに、バルト海を通ってロシアからドイツにガスを運ぶパイプラインで、これが稼働すればドイツを始めEUとロシアの関係が安定し、アメリカが追い出されることになる。ドイツのオラフ・ショルツ首相はアメリカに見放されないようにノルドストリーム2の稼働はまだだと述べ、メドベージェフは「それなら原油に2,000ユーロ払えばいいじゃないか」とフランス王妃みたいなことを言っている。ドイツの生産者物価指数は2021年1月に比べると25%以上上昇しており、本格的に物価が上がっているともうじき市民が感じるようになってくる。ドイツでもアメリカのようにステルス値上げ(シュリンクフレーション)が起こっていることが人々にバレはじめると、いよいよノルドストリーム2を稼働させざるをえない状況になってくるだろう。(EU will soon pay double for gas – Medvedev)(Nord Stream 2: Why Russia’s pipeline to Europe divides the West

 

ロシアが世界の商品市場で占めるシェアは大変大きく、JPモルガンのデータによればパラジウム45.6%、プラチナ15.1%、金9.2%、原油8.4%、天然ガス6.2%、ニッケル5.3%、小麦5.0%、アルミニウム4.2%、石炭3.5%、銅3.3%、銀2.6%となっている。バイデンは経済制裁をロシアに加えようとしているが、ロシアは1日1,000万バレルの原油を生産し、金準備は2,300トンに及ぶため制裁によって原油高や金価格の上昇が引き起こされるとむしろロシアの利益になる。ロシアは世界の仮想通貨時価総額の12%を保有しているとも伝えられており、金融市場のマネーがどんな商品や仮想通貨に逃避してもロシアの利益が増す構造になっている。(Russia's share of global commodities market.../Twitter

 

2月21日の午後、ブルキナファソの金採掘現場で大規模な爆発が起こり、少なくとも59人が死亡し、爆風で100名以上が負傷したという。ブルキナファソはアフリカで5番目の金生産国で、2017年に46,200kg、2018年に36,000kgの金を生産している。記事を読む限りだと、これは硝酸アンモニウムの肥料工場における爆発とか、ルネサスエレクトロニクスの火災とかとは異なって純粋に技術的なミスによる爆発のように見える。金生産が滞って金価格が上がって得するのはロシアだし、ロシアがわざわざブルキナファソを妨害しようとすることも考えづらいが、RTでは報道されていたので紹介した。ちなみに世界最大の金生産国は中国で420トン、二位がオーストラリアで330トン、三位がロシアで310トンとなっている。(At least 59 killed in mining blast – media

 

 いずれにしても原油高や資源高を通じて日本の生活費高騰、インフレも酷くなっていく。アメリカがここまでロシアを敵視し危機を煽るのはインフレが深刻だからだ。3月の半ばくらいが、FRBがインフレに対して何も対策を打つことができず無力であることが暴露され、いよいよ最終的な崩壊が始まる時期だと噂されている。カナダの取り付け騒ぎアメリカにも波及しそうな勢いで、実際アメリカでもフリーダムコンボイが3月上旬から始動し、ワシントンに向けて出発することが報告されている。カナダのように、フリーダムコンボイが銀行口座の凍結や取り付け騒ぎの序章となる可能性は高い。残された時間は少ないが、取れる対策を取っていくしかないだろう。(US ‘freedom convoy’ inspired by Canada bids to organize for Washington trip